「目が滑る」
「目が滑る」という表現をご存知ですか?「関東では全く通じないらしい」という話を同じく関西在住のフォロワーさんに聞いて驚いております。もしや方言なのでしょうか…アンケートお願いします。拡散してもらえるとありがたいです。
— へいぞう (@heizo888) 2016年11月5日
「「目が滑る」という表現をご存知ですか?「関東では全く通じないらしい」という話を同じく関西在住のフォロワーさんに聞いて驚いております。もしや方言なのでしょうか…アンケートお願いします。拡散してもらえるとありがたいです。」
という上記のツイート。
このツイートのリプライには、
「職場でも家庭でも普通に使いますし、聞きます」
「知ってるけど、使いたい言葉じゃないし使ってた覚えもない。多分ネットスラングの類では」
「ゲーム『テイルズオブジアビス』で初めて見た、それ以外で目にしたことがないので方言とは別では」
「職業柄よく使います、出身問わず周囲にも使う人がいる」
「標準語だと思ってたけど?」
「使う・使わないは地域よりは世代や周囲の環境によるのでは」
などなど。
面白いな~、と思って、ネットの事例をざっくり調べてみました。
作家が使っている事例
まず興味深いのが「小学館ファミリーネット」という小学館のサイトの「辞書引きかわら版 新しい辞書のかたち コトバノチカラ」というコーナーの、三浦しをん先生のインタビュー記事。
日常には、たくさんのことばがあふれているけれど、意外と聞き流していることが多いもの。深い意味を考えず使っていたり、文章を読んでいても、興味がないと「目が滑る」というか、いちいち引っかかりませんよね。辞書で「より道」することは、そういった目が滑っていたことばにも、あらためて出逢わせてくれます。
http://family.shogakukan.co.jp/kids/jisho/kawaraban/voice/04.html
三浦先生の発言です。ちょうどいまアニメも放映している直木賞作品『舟を編む』の作家として、辞書の楽しみ方、言葉への想いを語るコーナー。
(ここ、「目が滑る」と、括弧書きになってるんですよね。誰でもが知っていて当然の教科書的な言葉じゃないけれど、おおむね意味の通じる言葉として使われている印象があります。)
村田 それはすごいわかります。なので、自分が小説を書くときも、最初はノートにシーンを書いて、それをパソコンに打ち込んで、プリントアウトします。画面だと目が滑るので、プリントアウトしたものを読んで、そこに手でどんどんシーンを書き加えていきます。白い紙もノートもいっぱい使って、手で書き加えていく。それを、2時に起きてひたすらパソコンに打ち込む、という。だから、最初からパソコンに打ち込む人よりは遅いんですが、どうしても手でないとダメな部分がありますね。
http://www.sakuranbo.co.jp/livres/sugao/2016/09/post-68.html
「小説家になりま専科」というサイトの記事。村田沙耶香(小説家)×池上冬樹(文芸評論家)対談の、村田先生の発言。村田先生は『コンビニ人間』2016年の芥川賞を受賞。
Yahoo!知恵袋
Yahoo!知恵袋で「目が滑る」「目がすべる」のキーワードで検索すると、語の意味を問う質問がいくつも出てきます。検索可能だった中で最も古いのが、2006年の
「漫画や文章を読んで「目がすべる」という表現を目にしますが
この「目がすべる」とは具体的にどのような状態のことを言うのでしょうか? 」http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q128610317
という質問。この時点ですでに漫画等で目にすることがあるとわかります。
ネットでの使用例
Googleで期間を2006年以前に設定して検索してみると、いくつか使用例を発見。
読んでいる小説のページの上を目が滑っていく。
城好きさんの個人サイトの旅行記。2000年。
77 :花と名無しさん:02/02/11 01:05> 76
> そこからまたどうしてあんな
> 全部セリフで読ませます漫画になっちゃったんだろう…禿堂。あの脳内垂れ流しなモノローグの嵐は何?
目が滑って全然読めませんでした…。
2chのログ。2002年の、漫画家のスレですね。
101 :無名草子さん:02/07/20 01:41
>>97
読もうと思っても目がすべって読めない。
むずかしい本が読めないんなら納得いくけど、簡単な本なのに目がすべるのは
何故なんだろう?不思議なんだけどね。
こっちも2chログ。作家スレ。
建築史家の長谷川尭氏は「モダンは目が滑る」とおっしゃっていた。つまり面白味がないと言うのだ。それにくらべ西洋風建築は「見飽きないし、一点一点見ていられる」と。
個人のはてなブログ。2001年の建築史家の公演記録のメモを2008年にデジタル化したものとある。
小林さんの作品は、量子なんとかとか、目がすべってしまうような難しいものがいろいろ入っているので、たしかにハードSFなんだろうな、と予想できますが、小説の骨組は、わたしにとっては限りなくミステリ的なのです。オチのある小説、といってもいいかもしれませんが。
http://www.sf-fantasy.com/magazine/interview/030801.shtml
2003年8月の記事。SF・ファンタジー系の老舗サイトの作家インタビュー記事で、発言者のかたはSFファンサイトの管理人さんだった様子。(サイトは消えていましたが、ざっと検索した感じ古参かつディープなSFファンのかたとお見受けします)
……と、いう感じで、少なくとも2000年代頃には使う人がいたことは間違いなさそう。新語というにはそこそこ歴史があると言っていいかも。
これ以上はネットで簡単に調べられる範囲の外になっちゃいますが、1990年代ごろに出版されてる小説やエッセイにはもう出てきてそうな気がするなぁ。
なお、もとのアンケートツイートのリプライにあった「テイルズ オブ ジ アビス」というゲームは2005年発売(Wikipedia調べ)。
以上、なんとなく調べてみた結果のご報告でした~。面白いなぁ。